あいちデジタルアーカイブ活用推進協議会 設立記念講演会  2001年(平成13年)12月7日
ものづくりの歴史を、観光産業の新たな目玉に
愛知県は、尾張徳川の歴史をはじめ、徳川美術館に見られるような伝統工芸、伝統芸能など、非常に文化度の高いエリアであるとされています。なかでも「ものづくり」に関する膨大な資料は、産業の集積地として発展してきたこの地域のアイデンティティを、強く特徴づけるものです。
 
こうした地域特性をふまえたうえで、地元のコンテンツ制作会社・株式会社エイ・ワークスの代表を務める赤崎まき子氏は、「ものづくりの記憶の結晶を残していきたいという思いから、産業遺産データベースの開発に着手しました」と語りました。
 
同社では、これまで広く産業遺産の研究・調査を行ってきた中部産業遺産研究会の協力を仰ぎながら、今まで眠っていた資料を効率よく検索・利用するためのアプリケーションを開発し、「日本の産業遺産データベース」としてこれをまとめました。このデータベースは、ダム、架橋、工場、また工具や農具といった総数20,000点以上の画像と、約7,000件の対象物件から構成されているそうです。
 
またこのデータベースをもとに同社では、インターネット上で『産業遺産ナビゲーター』 を企画制作しました。
 
「教育用コンテンツとして開発したこのナビゲーターでは、全都道府県の各種産業遺産を紹介しています。その主旨からすると、産業機器などについては、その仕組みが解らないと意味がないので、CGやアニメを使ったメカニズムの解説も行っています」
 
エイ・ワークスでは、これからの産業遺産の具体的な活用方法として、観光分野とのジョイントによる「産業遺産観光」という視点を提示しました。その一例として、経済産業省の実証実験として名古屋市内のタクシーに端末を導入し、移動中にコンテンツを提供するという試みが紹介されました。
 
「私たちは、ここで『ものづくり観光』と題したコンテンツを提供しています。タクシーを使ったこのような技術のリンケージをはじめ、今後も新たな産業遺産コンテンツの活用を考えていきたいと思います。そして、2005年の愛知万博に向けて、ぜひ皆さんとあらゆるかたちでアライアンスができたらいいなと考えています」
 
デジタルアーカイブと観光を新しい技術で繋ぐこうした試みのなかにも、産業を通じた今後の地域活性化にかける愛知県の意気込みがうかがえました。