毎日新聞  2002年(平成14年)7月31日 水曜日
何を魅せるか名古屋
〜名古屋における都市観光のあり方〜 第13回Crec産官学民セミナーより

赤崎
名古屋は地下街が発達し、地上を人が歩いていないのが、ネックになっていると思います。地下街はすべて駐車場か道路にして、名古屋駅から栄えまでの間の路面店はすべてお買い物ができたり、おいしいものが食べられる商業施設にするとか、思いきった仕掛けが必要だと思います。銀行や企業は2階以上にして、1階はおしゃれなスポットが連続しているというゾーニングができたら、かなり変わると思います。
池田
名古屋の問題の一つは、都市イメージがはっきりしないことにあると思います。港町横浜や古都京都ほど明確でなくても、名古屋のイメージをもう少し絞り込んでいく必要があるのではないか。それには相当工夫がいると思いますが、「名古屋ってこんなまちだよ」と答えられるような言葉をぜひ用意したいと思います。二つ目は 、案内するところがあれもこれもあるということです。そうではなく、見るところは一つか二つでいいわけで、その近くにおいしい店があり、いい土産物屋があり、帰ってから話ができる仕掛けがあることの方が大事です。自慢話につながる仕掛けを作る方が、見るところばかりがたくさんあるよりいいのではないかという気がします。
山崎
日本では、外国からお客様が来るとなると、欧米人対策を考えすぎるようです。そのため、案内表示やホテルの施設、ツアーの設定など、観光に必要なインフラやサービスが欧米向けになりすぎているきらいがあります。これから万博を控え、いろいろな形で受け入れ整備がされてくると思いますが、もっとアジアに重点を置いた機能やサービスをすすめていったらいいと思います。
赤崎
とにかく万博を成功させないといけない。やる以上は、この地域の資産づくりにつなげていくものにすることが必要です。万博のテーマである『自然の叡智』と『ものづくり』ということがフィットした展開を期待をしています。もう一つは、万博会場だけではなくて、この地域の広域的なビジターのことを考える必要があるということです。それが、歴史観光であったり、産業観光であったりしますが、ものづくりとどう結びつけるか。また、そこにどんな楽しみがあるのかをあらかじめ情報発信して、それを目指してやっていくことが大事かなと思います。
池田
先ほどのレポートにはアクセスが悪いとありましたが、2005年には地下鉄の環状線ができます。その沿線をつないでいくと、栄、矢場街、久屋大通という都心があります。それから、熱田神宮、名古屋城、ナゴヤドーム、瑞穂グランド、大須、四ッ谷山手、少し離れますが白壁の町並み保存地区など、さまざまなスポットがあります。環状線というのは、外から来られた方が安心して乗っていられる鉄道です。環状線をぐるぐる回ってもらうというのも、観光PRの一つの手段に使っていいのではと思います。
中根
先ほど池田さんから、名古屋の都市のイメージが伝わっていないのではないか、それを打ち出すべきだというご指摘がありましたが、私もそう思います。ただ、渡しはその手法として、全体に網をかけて「何とかのまち名古屋」というのではないという気がしています。それより名古屋の一部分が全国区として評判になるとか、注目されることが大事だと思うのです。そうした場所が1ヵ所でもあると、そこから「名古屋にはこんな部分があるんだ」「こういうまちなんだ」と、連鎖状に広がっていくのではないかという気がします。小樽や横浜も街全体が整っているのではなく、ある一部分から都市イメージが広がっているんだと思います。満遍なくというより、ある地域に都市計画上の社会インフラの整備とあわせて、舞台づくりをし、元気を注入するという手法です。しかも住民や事業者を巻き込みながら、1ヵ所なり2ヶ所なりを育てていくことが大切だと思います。
奥野
私は名古屋圏内には観光地がたくさんあると思います。ただ、一級の観光条件が整備されているかというと、そうは言えない。だからこそ2005年の万博を目指して、世界に売り出していくことが必要だと思っています。そのときに、1つは都市の中に核を作ること、2つは名古屋だけでなく、岐阜や三重も交えて広域的に考えていくことが必要ではないかと思います。いずれにしても、地元の者が自身を持たなければ話になりません。観光都市名古屋に向けて自身を持って取り組んでいくことが大事ではないかと思います。今日はどうもありがとうございました。